
近年、台湾は日本人の海外移住先として注目を集めています。温かな国民性や日本に通じる文化、安定した治安など、暮らしやすい環境が整っています。2024年10月時点で約2万人以上の日本人が台湾で生活し、その数は増加中です。
また、日本より抑えられた物価水準や充実した医療制度、活気あるビジネス環境を求め、多くの方が移住を検討しています。本記事では、台湾移住を考えている方に向け、基礎知識や手続きについて解説します。
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1. 台湾移住の基礎知識
まずは台湾という国の特徴や、生活環境について基礎情報をお伝えします。
台湾在住経験のあるフルーエントの”Aトレーナー”の実際の体験も交えながらご紹介します。
1-1.台湾ってどんな国?基本データを解説
台湾は東京から約2,100キロメートル離れた位置にある島国です。面積は九州とほぼ同じ大きさですが、約2,342万人(2024年1月時点)もの人々が暮らしています。主要都市には首都の台北をはじめ、台中、高雄などがあり、それぞれの街が独自の魅力を育んでいます。
また、近代的な都市機能と豊かな自然環境を併せ持ち、年間を通して温暖な気候であることから、日本人からの支持も高い国となっています。
1‐2. 台湾の言語
公用語は中国語(台湾華語)で、中国大陸で使われている中国語(普通話)とは使われている文字が違います。(台湾華語は「繁体字」、普通話は「簡体字」が使われます)ただ、文法や発音はほぼ同じなので大陸の普通話が分かるとだいたいのことは通じます。また、台湾華語の他に台湾語や客家語なども広く親しまれている言語です。
観光地では日本語や英語を理解できる人も多いものの、生活面では中国語の日常会話レベルが求められます。特に台湾での就職を考える場合は、中国語ができると応募できる求人の幅が広がり、ビジネスチャンスも多くなるため、習得しておくことをお勧めします。
とはいえ、繁体字の習得は簡体字に比べ教材やスクールなど少ないのが現実です。
ただ、汎用性が高い簡体字を習得さえすれば、会話はもちろん、簡体字についても台湾人には十分通じるので、日本人にとって学びやすく使用人口の多い簡体字を先に学ぶことをおススメします。



1‐3. 気候と地理 – 日本との違いは?
台湾の気候は亜熱帯性気候に属し、年間を通じて温暖な気候が特徴です。特に夏場は高温多湿で蒸し暑い日が続き、都市部ではその暑さが一層厳しくなることがあります。
気温の面では、台北で15度~28度、南部の高雄では20度~30度程度で推移し、冬は比較的過ごしやすい環境です。
ただし、都市部では交通量が多く、特にバイクの排気ガスによる大気汚染が日常的な課題となっています。また、台風シーズンには大雨に見舞われることもありますが、防災システムが整備されているため、台風などの自然災害が予想される場合に公的な休業が設けられるなどその対策は万全です。
1‐4. 医療制度と保険の仕組み
台湾の医療制度は充実しており、日本の国民健康保険に相当する制度が整備されています。在留資格を持つ外国人も加入できる一方、医療費の自己負担は60%と一見高く感じるかもしれません。
しかし実際の診察費は1,000円程度と手頃な価格設定で、他の外国と比べても医療費の負担は抑えられています。さらに、日本語対応が可能な医療機関も数多く存在するため、言葉の心配なく医療サービスを受けられる環境が整っています。
また、この保険を使って中医(推拿や漢方薬などの東洋医学の手法で体の調子を整えるもの)にかかることもできます。
1‐5. 日本人コミュニティの現状
台北を中心に、活発な日本人コミュニティが形成されています。日本人学校や日本人会などの組織も存在し、情報交換や交流の場として機能しています。SNSを通じたコミュニティも多数存在し、生活に関する情報共有や、趣味のサークル活動なども盛んに行われています。
2. 台湾移住のメリット
台湾移住の魅力は、治安の良さや生活コストの低さにあります。実際の生活者の声を基に、具体的なメリットを見ていきましょう。
2‐1. 安心して暮らせる優れた治安
台湾の大きな魅力は、その優れた治安にあります。街頭防犯カメラの設置が進み、夜間の一人歩きでも比較的安全に過ごせます。監視カメラの多さや国民性によって、治安が維持されています。
2‐2. 日本の半分以下で済む生活費
生活費は日本と比べて全般的に安価です。家賃は済む場所や広さにもよりますがワンルームでだいたい月6万~8万円ほどです。また、水道・光熱費は季節によっても変動しますがだいたい5000円ほどになります。
食事は屋台やレストランが充実しており、ローカルフードなら500円ほどで満足できる食事を楽しめます。タクシーは初乗り300円から、ホテルも3000円から泊まることができ、生活にかかるコストは低めです。
2‐3. 充実した医療制度と手頃な医療費
医療は高水準の上に、医療費もお手頃です。台湾在住の場合、医療費の自己負担は60%で、1000円程で診察を受けることができます。日本以外の国では医療費が高いことが多いため、高水準な医療を手ごろな価格で受けられるのは大きな利点です。
2-4. 親しみやすい食文化が魅力
台湾の食事は日本人の舌に合いやすいと言われています。米が主食で、野菜炒めや揚げ物などの料理スタイルも親しみやすいものです。日本食レストランも多く、すき焼きや卵かけご飯なども楽しめます。
台湾旅行の目的は屋台!という日本人旅行者が多いことでも分かるように、台湾の料理は魅力がたくさんあります。
台湾の食文化は、1949年の中国内戦で敗れた蒋介石と国民党と共に、多くの料理人が台湾へ移住したことにも影響を受けています。そのため、中国四大料理はもちろん、各地のさまざまな中国料理が楽しめる美食の街となっています。
2-5.花粉症が緩和される
台湾は日本と比べてスギやヒノキの花粉がほとんど飛んでいません。そのため、日本でスギ花粉症に悩んでいる人は、台湾に行くと症状が和らいだり、ほぼ無くなることが多いです。日本には花粉症の方が多いので、そんな方には大きなメリットですね!
3. 台湾移住のデメリット
やはり、文化も違うの台湾での生活には日本とは異なる部分もあります。注意すべきポイントを確認していきましょう。
3‐1. 蒸し暑い気候と大気汚染
夏の都市部では、蒸し暑さに加え、バイクの排気ガスとコンクリートの照り返しが重なり、かなり過酷な環境となります。特に喘息持ちの方などには、夏の台湾都市部は厳しい環境かもしれません。
3‐2. 要注意な交通事情
バイクを中心にラッシュ時は道路が非常に混雑します。運転マナーも日本とは大きく異なり、バイクが絡んだ交通事故を目撃することもしばしば。歩行者優先の意識が強い日本に比べると、道路の横断には細心の注意が必要です。
3‐3. 日本より低い給与水準
台湾の平均給与は日本と比べて低めです。日本人の平均年収が445万円ほどなのに対して、台湾人の平均年収は333万円と言われています。台湾で働いて収入を得ることを主目的とした移住は、そのあたりを念頭に置いておきましょう。
3‐4. 不安定な国際情勢
台湾は中華人民共和国との関係において、特殊な社会情勢にあります。今後、香港のように中国政府と板挟みになり、騒動が起きる可能性もゼロではありません。政治的なリスクが付随することを理解しておく必要があります。
4. 台湾移住に向いている人
台湾移住の成功には、個人の適性が大きく影響します。以下に、移住後の生活を充実させやすい人の特徴を解説していきます。
4-1. 台湾が大好きな人
台湾の食文化や民族文化が大好きで、台湾にいつか移住してみたいと切望している人には非常におすすめです。台湾には観光地が沢山あり、国内旅行も非常に楽しめます。生活コストが日本よりも低く、飛行機で3時間で日本に戻れることなど、移住のハードルは比較的低いと言えます。
4-2. 自身で生計が立てられる人
自身でビジネスを展開し、生活できる基盤がある人は、台湾移住の利点を最大限活用できます。税金が安い、社会保障が厚い、日本から近い、食事のレベルが高いなど、様々なメリットを享受できます。さらに、日本の生活と比べて支出を抑えることができます。
4-3. チャレンジ精神のある人
台湾で活躍している人は、チャレンジ精神が旺盛なタイプです。中国語を積極的に学んでマスターしたり、営業職であれば新規開拓にもチャレンジしたりするような人が活躍しています。文化の違いを楽しめる方、新しい環境での挑戦を前向きに捉えられる方は、台湾での生活を充実させやすい傾向にあります。
5. 台湾移住に向いていない人
一方で、以下のような特徴がある方は、台湾移住について慎重な検討が必要です。
5-1. 潔癖症の人
高温多湿で、日本と比べインフラが整っていない面があるので、潔癖症の方には苦しく感じる場面も多くあるかもしれません。トイレットペーパーを水に流せない場所も多く、気候的にも虫が多く生息していたりすることも。ただし、ゴミに関しては台湾のリサイクル率は日本を大幅に上回っており、ごみの分別も行われています。昔のイメージとは少し違うかもしれません。
5-2. 日本のスタンダードで暮らしたい人
店員さんが営業中にスマホに夢中であったり、時間にルーズであったりなど、日本とは少し違うことも起こります。台湾人の感性に歩み寄る必要がある場面も多いため、日本式の生活スタイルにこだわる人には向いていません。あくまで海外ですので、寛大な心で生活できる人が台湾移住を心から楽しめます。
5-3. 安定した職がない人
台湾で就職先を確保せずに移住するのは、大きなリスクを伴います。日本国内からインターネットを活用して事前に就職活動を行うこともできるので、確実に内定を得てからの移住の方が望ましいでしょう。
仮に渡航後に仕事を失うと、在留資格が失効して帰国を余儀なくされる可能性があります。さらに、台湾の給与水準は日本より全般的に低い傾向にあるため、現地での就職は収入面も含めて慎重に検討する必要があります。

6. 台湾移住に必要なビザと手続き
実際の移住に向けて、必要な手続きと準備について解説します。ビザの取得から現地での各種登録まで、漏れのない対応が重要となります。
6‐1. ビザの種類と申請条件を詳しく解説
台湾への移住で最も一般的なのが就労ビザです。一般職では大学卒で2年以上、短大/専門学校卒で5年以上の関連実務経験が必要です。また、就学ビザや、投資による居留ビザなど、目的に応じて選択できるビザの種類が用意されています。 日本人は90日間のビザ免除で滞在できるため、この期間を利用して現地視察や準備を行うことも可能です。申請に必要な書類は、パスポート、証明写真、履歴書、学歴証明書、無犯罪証明書などとなります。
6‐2. 就労ビザの取得方法
就労ビザの取得には、まず台湾の企業からの雇用オファーが必要です。企業側が労働許可証を申請し、それが承認されてから個人のビザ申請手続きに入ります。手続きの流れは以下の通りです。
- 台湾企業からの雇用契約書の取得
- 企業による労働許可証の申請
- 労働許可証取得後、就労ビザの申請
- ビザ取得後15日以内に居留証(ARC)の申請
6‐3. 居留証(ARC)について
居留証(ARC:外国人居留証)は、台湾での生活に必要不可欠な身分証明書です。銀行口座の開設や携帯電話の契約、賃貸契約など、様々な場面で必要となります。取得後は有効期限内であれば、台湾への出入国が自由にできます。期限を確認しながら、適切なタイミングで更新手続きを行うことが重要です。
6‐4. 必要な費用と具体的な準備リスト
台湾移住に必要な初期費用として、居留ビザ申請料(シングル:10,100円、マルチ:20,200円)が発生します。また、生活を始めるための準備として、家賃の2〜3ヶ月分(敷金・保証金含む)、生活費の余裕分(最低3ヶ月分)などを見込んでおく必要があります。ほとんどの賃貸物件は家具・家電付きとなっているため、その点は安心です。
月々の生活費として、家賃(単身~2人用で20,000~30,000台湾ドル/約90,000~135,000円)に加え、光熱費や通信費、食費などで15,000~25,000台湾ドル(約67,500~112,500円)程度を見込んでおくとよいでしょう。
※1台湾ドル = 約4.5円で計算
台北市中心エリアでの価格帯なので、中心地から離れると費用はもう少し抑えられるかもしれません。
よくある質問
1. トイレットペーパーを流せない場所が多いと聞きましたが、本当ですか?
場所によって異なります。最近は水溶性のトイレットペーパーを採用する場所が増えていますが、特に古い建物では水圧や排水管の問題で流せない場所も多くあります。トイレットペーパーを流せる場合は専用マークが表示されているので、必ず指示に従いましょう。以下の施設の状況が確認されています。
- MRT駅:比較的きれいですが、トイレットペーパーの備え付けがない駅もある
- 台湾新幹線:駅、車内とも清潔で、トイレットペーパーあり
- デパート:基本的に清潔で、トイレットペーパーの用意あり
- コンビニ:借りられる場所は少なく、トイレットペーパーがない(または切れている)ことが多い
- ホテル:施設により異なるため、表示を確認する必要あり
なお、誤って流してしまい詰まらせた場合、高額請求されるケースもあるため、必ず表示を確認しましょう。
2. 台湾の昼寝文化について教えてください
台湾では昼寝が生活の一部として深く根付いています。
小学校から高校までの教育機関では、昼食後に30分から1時間の昼寝時間が正式に設けられており、これは授業と同様に全員参加が求められます。小学生は枕を持参することもあり、風紀委員が教室を見回って寝ていない生徒に注意をするほど、制度として確立されています。
この習慣は社会人になっても続き、2012年の調査では91.5%もの人が昼寝をすると回答しています。多くの職場では昼休みに消灯して、社員が机に突っ伏して休憩を取ることが一般的な光景となっています。仕事の効率アップにもつながるとされ、広く受け入れられています。
ビジネスマンが知っておくべき点として、昼休み時間帯に取引先への連絡を予定している場合は、相手が昼寝をしている可能性があるため、事前に適切な時間帯を確認することが推奨されています。
3. 台風シーズンの対策は大丈夫ですか?
台湾の台風シーズンは7〜8月がピークとなります。近年は温暖化の影響で直撃は減少傾向にありますが、台風が接近・上陸した際は以下の対応が必要です
台風接近時は「停班停課」という発令が出され、学校や仕事が休みとなり、デパートやレストランなども閉店します。このような場合は、雨風が強くなる前に食料や飲み物を確保しておくことが重要です。台湾では台風時に人々がカップ麺やお菓子、飲み物などを買い込む傾向があるため、早めの準備をお勧めします。
台風直撃時は非常に強い雨風となるため、外出は危険です。室内での待機が無難です。また、台風通過後もタクシーの確保が難しく、道路には倒木やごみが散乱している可能性があります。このため、夏季の台湾旅行では旅行保険への加入がお勧めです。台風の影響を受ける可能性もあるため、出発前日までにオンラインで加入できる保険を検討しておくとよいでしょう。
4. ユーバイク(YouBike)とは何ですか?また、どのように利用できますか?
ユーバイクは台北市が運営する公共レンタルサイクルサービスで、台北市内の重要な交通手段の一つとなっています。現在では新北市、桃園市、新竹市など他の地域でも利用可能です。
使用するには、専用アプリ「YouBike微笑單車」での会員登録と、悠遊カード(台湾の交通ICカード)、台湾の電話番号が必要です。利用方法は、ステーションで悠遊カードをかざして自転車を借り、返却は借りた場所と異なるステーションでも可能な便利なシステムになっています。
アプリでは近くのステーションの自転車の空き状況をリアルタイムで確認できるため、バスやMRT駅から離れた場所への移動に便利な交通手段として、観光客も含め多くの人々に活用されています。
まとめ
台湾移住は、適切な準備と心構えがあれば、充実した海外生活を送れる選択肢の一つとなります。親日的な国民性や比較的安定した治安、充実した医療制度など、日本人にとって暮らしやすい環境が整っています。
一方で、気候や文化の違い、言語の壁など、克服すべき課題もあります。移住を検討する際は、まず短期滞在で現地の生活を体験し、自身に合っているかどうかを見極めてみてもよいのではないでしょうか。経済的な準備や必要な手続きを計画的に進めることで、スムーズな移住が実現できるでしょう。
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