目的語を動詞の前に引っ張り出す役割のある、「把」。把が使われる文章は、把構文と呼ばれ、日常生活においてもよくであう表現です。把構文を使いこなして、言いたいことをニュアンスも含めて相手に伝えられたら最高ですよね。
今回は、この把構文の特徴と注意点などを、私(中国ゼミスタッフS.N.中国在住歴3年・ HSK6級取得)がご紹介。使い方の実例をと共に、学びを深めていきましょう。
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目次
1.把構文とは
把構文とは、本来なら動詞の後ろに置かれる目的語を、把をともなって動詞の前に持ってくる構造の文章のこと。
◇平叙文
Tā zùowán zùoyè le 他做完作业了 ター ツゥオワンツゥオイェ ラ |
↓
◇把構文
Tā bǎ zùoyè zùowán le 他把作业做完了 ター バー ツゥオイェ ツゥオワン ラ |
目的語の場所が移動していることを確認してください。この把構文は、目的語に、何らかの処置を加えて、それに影響を及ぼし、変化を生じさせる意味があることから、処置文とも呼ばれています。詳しくみていきましょう。
上記の例文二つはいずれも日本語訳すると「彼は、宿題をやり終えた。」となります。この部分だけ見ると、その違いが何なのか、よくわかりませんね。
しかし両者にははっきりとした「意味の違い」があります。まず、前者の文章は、「宿題をやり終えた。」という事実を述べているだけの文章。
ですが、把構文を使うことで、把のあとに置かれた目的語(ここでいう作业)に何らかの変化、影響を与えようとする処置の意図を加えることができます。
…と、このように文字だけで説明をされても「いまひとつわかったようなわからないような」気分になるのが把構文ではないでしょうか。そのような時は、実際に文章の中でどのように使われているのか、確認しながら理解を深めていきましょう。
ポイントは、目的語に対して、どのように手を加えようとしているのかに着目することです。
娘は薬を飲んだ Nǚér bǎ yàochīle 女儿把药吃了。 ニューァー バー ヤオチーラ |
単に薬を飲む、ではなく、「AでもBでもない、その薬を飲み切るんだ」という「薬に対する処置の意図」が、感じられるでしょうか。
母は窓を閉めました。 Māma bǎ chuānghu guānshang le 妈妈把窗户关上了。 マーマ バー チュアンフ グァンシャン ラ |
単に窓を閉める、ではなく、「他でもない、その窓に(手をかけて)閉めよう」という「窓に対する処置の意図」がより強調されていることを感じ取ってください。
また、実際の会話シーンでは、“誰かに何かをお願いする・指示するとき”に使われることが多く、把構文の感覚を掴みやすいです。チェックしてみましょう。
窓を開けて。 Nǐ bǎ chuānghu dǎ kāi 你把窗户打开。 ニー バー チュアンフー ダーカイ |
鍵をかえしてください。 Qǐng bǎ yàoshi huán gěi wǒ 请把钥匙还给我。 チン バー ヤオシ フゥァンゲイ ウォー |
1-1.把構文を使うときの注意点
実は把構文は、いつどんな時でも使える構文ではありません。置かれる目的語や動詞のかたちには一定の決まりがあります。
■目的語に注意!
まず、目的語は、漠然としたもの、ではなく、話し手・聞き手双方にとって特定のものであることが必要です
李さんは、その手紙を読み終わった。 Xiǎolǐ bǎ nà fēngxìn kànwán le 小李把那封信看完了。 チン バー ヤオシ フゥァンゲイ ウォー |
※注意:あの手紙でも、この手紙でもなく、特定の「その手紙」を指している。
妹はコップを落として割ってしまいました。 Mèimei bǎ bēizi shuāisùile 妹妹把杯子摔碎了。 メイメイ バー ベイズ シュァイスイラ |
■動詞に注意
把構文で使われる動詞には、必ず何らかの動詞をサポートする要素が必要です。したがって
×他把那杯咖啡喝。
このように、動詞単体だけでの使い方はできません。この場合どう修正すれば良いでしょうか。
彼はコーヒーを飲みほした。 Tā bǎ nàbēi kāfēi hēwánle 他把那杯咖啡喝完了。 ター バー ナーベイ カーフェイ フーワンラ |
このように、動詞の後ろに補語などが付くことが通常です。
この理由は、目的語であるものに何らかの処置を加える、という意味がある以上、その処置が加えられて、どうなったか、(位置が変化したのか、状態が変わったのか)何らかの変化や結果を明示する必要があるからです。
《把構文で使われる動詞の形一例》
■アスペクト助詞である「了」「着」
hēle 喝了 フーラ |
názhe 拿着 ナーヂャ |
■方向補語などの補語成分
dàiláile 带来了 ダイライラ |
zuòhǎole 做好了 ツゥオハオラ |
shuōde hěnliúlì 说得很流利 シュォーデァ ヘンリューリー |
※「了」と共に使われることももちろんある
※補語といっても、可能補語は使うことができない
×我把这个中国菜吃不惯。
私はこの中華料理を、食べ慣れない。
■動詞の重ね方
tǎolùntaolun 讨论讨论 タオルンタオルン |
動詞単体で使われることがない、ということを覚えておきましょう。また、目的語に何らかの行為や処置を加えることを表すので、動詞は能動的な意味のものが使われます。把構文で使われない動詞を以下で確認してください。
《把構文で使われない動詞》
■判断、状態を表す動詞
是 shì(…である)、像 xiàng(似ている)、有 yǒu(ある、もっている)、姓 xìng(姓は…です)、存在 cúnzài(存在している)、在 zài(ある)、属于 shǔyǘ(属している)
■目的語をとらない動詞
合作 hézuò(協力する)、施行 shīxíng(とりおこなう)、游泳 yóuyǒng(泳ぐ)
■知覚、心理活動を表す動詞
知道 zhīdao(知っている)、相信 xiāngxìn(信じる)、希望 xīwàng(望む)、认识 rènshi(知り合いだ)、觉得 juéde(…と思う)、看见 kànjiàn(見える)、听见 tīngjiàn (聞こえる)
■方向を表す動詞
上 shàng(あがる)、下 xià(さがる)、出 chū (出る)、回 huí(戻る)、起 qǐ (起きる)、来 lái(来る)、去 qù(去る)
1-2.把構文の否定形
把構文を否定形で使うとき、否定の副詞(不、没)や禁止の副詞(別)は把の前に置きましょう。
このことは彼には言わないで。 Bié bǎ zhèjiànshì gàosu tā 别把这件事告诉他! ビィエ バー ヂァジィェンシー ガオス ター |
私も中日辞典をもってきていません。 Wǒ yě méi bǎ Zhōngguó cídiǎn dàilái 我也没把中日词典带来。 ウォー イェエ メイ ヂョンリー ツーディエン ダイライ |
王先生は誰のことも眼中にない。 Wánglǎoshī bǎ shéi dōu bú fàngzài yǎnli 王老师把谁都不放在眼里。 ワンラオシー バー シェイ ドゥオ ブー ファンザイ イェンリー |
語学学習にイレギュラーはつきもの!まずは基本を押さえ、あてはまらない表現に出会うたびに、確認する習慣を持つようにするといいですね。
1-3.把構文と助動詞の関係
次に、助動詞(会、要、应该など)がともに使われる場合の語順を確認します。助動詞は、動詞の前に置かれ、可能や願望、義務、必要などを表すもの。その動詞の内容を補足説明するイメージを持っておくとよいでしょう。
これら助動詞も、先述の否定形と同じく、把の前に置きます。
靴をきれいに洗いなさいよ。 Nǐ yào bǎ xiézi xǐgānjìng 你要把鞋子洗干净。 ニー ヤオ バー シエズ シーガンジン |
1-4.把構文が必要な場面
動詞の後に、目的語が置けない形の文章では、把構文が活躍します。
たとえば、
動詞 + 在 zài / 到 dào / 給 gěi + 到達点 動詞 + 成 chéng + 変化したあとのかたち |
といった文章構造の場合。
店長は、カバンを机の上に置きました。 Lǎobǎn bǎ shūbāo fàngzài zhuōzi shangle 老板把书包放在桌子上了。 ラオバン バー シューバオ ファンザイ ヂュオーズ シャンラ |
×老板放在桌子上书包了。とは言えません。
兄は私と弟を駅まで送ってくれました。 Gēge bǎ wǒ hé dìdi sòngdào chēzhàn le 哥哥把我和弟弟送到车站了。 グァグァ バー ウォー フー ディディー ソンダオ チァージャン ラ |
李先生は重要な資料を生徒たちに渡しました。 Lǐlǎoshī bǎ hěnzhòngyào de zīliào jiāogěi xuésheng le 李老师把很重要的资料交给学生了。 リーラオシー ヘンジョンヤオダ ズーリャオ ジャオゲイ シュェシォン ラ |
私は中国語を日本語に訳せない。 Wǒ bù néng bǎ Zhōngwén fānyìchéng Rìyǔ 我不能把中文翻译成日语。 ウォー ブーノン バー ヂョンウェン ファンイーチォン リーユー |
1-5.把構文が好まれる場面
把構文が好まれるケースを確認しましょう。
■二重目的語
まずは、動詞が二重目的語を取れるものです。
彼女はこの良いニュースをあなた達に伝えた。 Tā bǎ zhège hǎoxiāoxi tōngzhī nǐmen 她把这个好消息通知你们。 ター バー ヂェグァ ハオシャオシー トンジー ニーメン |
■目的語に長い修飾語がついている
このような場合も把構文のスタイルをとって、目的語を前に出すケースが多いです。
彼は、彼の母親が去年外国から買って帰ってきた服をなくした。 Tā bǎ tāmāma qùnián cóng wàiguó mǎihuilaide yīfu nòngdiūle 他把他妈妈去年从外国买回来的衣服弄丢了。 ター バー ターマーマ チューニィェン ツォン ワイグゥオ マイフゥイライダ イーフ ノンディゥラ |
■動詞に複合方向補語、状態補語がついている
彼はこの靴をキレイに洗った。 Tā bǎ zhèshuāngxié xǐde hěngānjìng 他把这双鞋洗得很干净。 ター バー ヂァシュァンシィエ シーダ ヘンガンジン |
■動詞に複合方向補語、状態補語がついている
その絵を掛けてください。 Qǐng bǎ zhèfùhuàr guàshangqu 请把这副画儿挂上去。 チン バー ヂァフーファァー グァアシャンチューン |
1-6.把構文にまつわる+α
■訳し方の注意点
多くの場合、把構文の目的語は「…を」と訳されることが多いのですが、なかには「…に」と訳した方が適切な場合があります。
母は「門に」カギをかけた。 Māma bǎ dàmén shànglesuǒ 妈妈把大门上了锁。 マーマ バー ダーメン シャンラスォ |
彼は切手を手紙に貼る。 Tā bǎ yóupiào tiēzàile xìnfēngshàng 他把邮票贴在了信封上。 ター バー ヨウピャオ ティエザイラ シンフォンシャン |
これらは把のあとの目的語以外に、もうひとつ目的語があって、両方の目的語には意味の上で関連性があります。
■うっかりミスの把構文
把構文は、本来なら動詞のあとに置かれる目的語に、何らかの処置を加えることを意図する文章である、と考えると、以下のような文章は少々違和感を感じられるかもしれません。
カギをなくしてしまった。 Wǒ bǎ yàoshi diūle 我把钥匙丢了。 ウォー バー ヤオシ ディウラ |
わぁ、彼ら、バスを乗り間違えたよ! Āiyā tāmen bǎ chē zuòcuòle 哎呀,他们把车坐错了。 アイヤー ターメン バー チャー ツゥオツゥオラ |
これらは、目的語である「钥匙」や「车」にそれぞれ「なくす」「乗り間違える」という行為や処置を加えようとしたわけではありません。けれど、そうしてはならないものを、自分の不注意でうっかりマイナスの処置を与えてしまった!と考えると理解が進むかもしれません。
1-7.量詞や動詞、名詞としての「把」
以下は、把構文として使われる「把」以外の「把」の用法をご紹介します。
■量詞の「把」
取っ手のある器や、握るもの、などを数えるときに使われます。
一本の傘
yìbǎyǚsǎn 一把雨伞 イーバーユーサン |
一刀のナイフ
yìbǎcàidāo 一把菜刀 イーバーツァイダオ |
一脚のイス
yìbǎyǐzi 一把椅子 イーバーイーズ― |
■動詞の「把」
上記と関連して、「つかむ」という意味の動詞として用いられることもあります。
私のかわりにかじを取ってくれませんか。 Qǐng nǐ tì wǒ bǎ yíxiàr duò 请你替我把一下儿舵。 チン バー ヤオシ フゥァンゲイ ウォー |
■名詞の用法
手押し車や自転車のにぎり、ハンドルなど
自転車のハンドル
zìxíngchēchēbǎ 自行车车把 ズーシンチャーバー |
2.まとめ
把構文を中心に、その用法、使い方の注意点をまとめました。日常生活でも使われる頻度の高い把構文。
だからこそ、今回ご紹介した例文をもとにして、ご自身の生活で使う単語に置き換えるなどし、実際にどんどん使い、慣れていきましょう!
記事をお読みいただきありがとうございました。
中国語ゼミ読者のみなさまは、
・ネイティブとの会話を楽しみたい
・仕事で中国語を使えるようになりたい
・HSK、中国語検定に合格してキャリアアップしたい
・ドラマや映画を字幕なしで楽しみたい
・旅行で使える中国語を身につけたい
などなど、夢や目標をお持ちだと思います。
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講師は、中国語ゼミ監修者の三宅裕之。2001年に語学コーチングスクールを設立し、今まで15,000人以上を指導した語学×コミュニケーション力開発のプロフェッショナルが、わかりやすく解説しますので一生モノの知識を得られるはずです。
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